2020年前半から2021年にかけて、多くのSaaS企業はコロナの「恩恵」を受けて大躍進しました。Software as a Service(SaaS)はスタートアップやVCなどの投資家サークルの外でも幅広く知られるようになり、ビジネスの世界で市民権を得たと言えるのではないでしょうか。このようにSaaSの認知度が上がってくる中で、大企業ではSaaSの新規事業を立ち上げようという動きも出てきました。
しかし、大企業でSaaSの新規事業立ち上げを任されるも、SaaSの知見がないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事ではそうした方々のために、SaaSの新規事業を任されたらまず初めに学ぶべきこととして、基礎編と実践編の2回に分けて、SaaSの基本的なビジネスモデルや主要KPIなどを紹介し、それらをどのように作成、管理していくのかをご紹介いたします。
まずSoftware as a Service(SaaS)とは何かというと、クラウド(≒インターネット環境)を通して提供されるサービスとしてのソフトウェアです。ここではユーザーが管理するのはサービスに入力・蓄積していくデータのみで、それ以外は全てSaaSの提供者であるSaaS企業が管理します。
これと正反対にあるのが、オンプレミスのソフトウェアで、データからアプリケーション、OS、ハードウェアまで全てをユーザーが管理しないといけません。SaaSとオンプレミスの間に、Infrastructure as a Service(IaaS)、Platform as a Service(PaaS)などがあり、以下のように整理されます。
このSaaSビジネス、実は3つの大きなビジネス上のメリットがあり、これこそまさにSaaSが世界中で大きく伸びている理由と言えます。
売り切り型のビジネスというのは通常モノを売ったりするビジネスモデルで見られますが、ソフトウェアの世界だと、オンプレミスのソフトウェアは基本的に売り切り型となっています。この場合、ある期には大きく売上が入るも、次の期には売上が大きく落ちるといったようなことがおき、売上予測が難しくなります。
一方、SaaSだとサービスなのでオンプレミスのソフトウェアのように一回の売上で大きな額の売上が立つわけではないものの、継続課金で、毎月チャリンチャリンと売上が積み上がり、その結果売上の予測がしやすくなります。
そして、売上が予測しやすいということは、すなわち売上が大きく乱高下しないということなので、起業家・事業責任者としては事業計画が立てやすく、事業への投資判断もしやすくなります。加えて、SaaSビジネスに投資をする投資家としても、売上が読みやすいので、そのビジネスに対する投資がしやすくなります。
SaaSビジネスは、ビジネスモデルの特徴として、サービス提供開始時にその料金を支払ってもらうことが多いです。月額であれば向こう1か月分を、年額であれば向こう1年分をサービス開始時に払ってもらい、その後サービスを提供していきます。また場合によっては1年間以上、複数年の長期の契約を結ぶこともあり、その場合でも毎年1年間分ずつ前払いしてもらうことが多いです。
また最近多くのSaaS企業で取り入れられるようになってきた従量課金型の支払い方法(=使った分だけ支払うモデル)でも、通常最低支払額を設定し、最低限この金額分以上はサービスを使用し支払ってもらうという建付けで前払いをしてもらうといった企業もいます。
こうした形でサービス提供・売上計上よりも先に現金が入るというのは、実はビジネス上かなり有利です。通常ハードウェアなどのモノを売るビジネスは成長すればするほど運転資金として多くの資金が必要になりますが、SaaSはその逆で、成長すればするほど多くの現金を生み出すことになり、キャッシュフロー上有利になります。
オンプレミスのソフトウェアのアップデートを経験されたことのある方ならわかるのですが、オンプレミスのソフトウェアのアップデートは時間・費用が非常に多くかかります。
例えばグローバルで利用されているオンプレミスのソフトウェアなら、アップデート期間中はソフトウェアにアクセスできないので、地域や拠点ごとにアップデートをし、アップデートに数か月かかるということも珍しくありません。
そしてそのアップデートには、そのソフトウェアを導入した時と同じかそれ以上に多額の資金が必要になり、アップデート期間中は自社の貴重なITリソースがそのアップデートにかかりきりになります。
一方、SaaSはクラウド上でアクセスできるので、SaaSを提供している企業がソフトウェアをアップデートすれば、ユーザー・顧客は常に最新でベストな状態のソフトウェアにアクセスできます。これはSaaS企業にとってだけでなく、顧客視点でも非常に大きなメリットとなり、顧客がオンプレミスソフトウェアから、クラウドで提供されるSaaSに移行するのも容易に納得できます。
SaaSのビジネスモデルがわかったところで、SaaSの主要KPIを見ていきましょう。以下はSaaSビジネスの事業計画を作成、そして予実を管理していくうえでトラックしておいたほうがいい主要KPIです。
セッション数:自社・サービスサイトなどへのビジター数です。これは以下に続くリード数、商談数、受注数に繋がっていきます。主にマーケターがセッション数に責任を持ちます。
リード数:セッション数の中から商談につながる可能性の高いものの数です。セッション数の何%がリードに繋がるかをリード率といいます。主にマーケターがリード数に責任を持ちます。
商談数:リードの中から、実際に商談に繋がった数です。リード数の何%が商談に繋がるかを商談率といいます。主にインサイドセールスが商談数に責任を持ちます。
受注数:実際に商談を行い、受注に至った数です。商談数の何%が受注に繋がるかを受注率といいます。主にフィールドセールスが受注数に責任を持ちます。
解約数:有料顧客のうち解約した顧客の数です。今月の解約数 / 前月の累計顧客数で解約率を算出します。
累計有料顧客数:累計有料顧客数は、前月の累計有料顧客数+今月の受注数ー今月の解約数で算出され、MRRを計算する上で必要になる重要な数字です。
ARPA:Average Revenue Per Accountの略称で、顧客ごとの月額の継続売上です。顧客数xARPAでMRRが算出されます。
MRR:Monthly Recurring Revenueの略称で、月額の継続売上です。予測がしやすく、そのビジネスの成長を示す、SaaSビジネスでは最も重要なKPIと言えます。
ARR:Annual Recurring Revenueの略称で、MRRx12で算出される年換算の売上です。MRR同様、最重要KPIです。
粗利率:(売上ー売上原価)/売上で算出され、売上総利益率とも呼ばれます。SaaSビジネスでは、売上原価には主にAWSやGCPなどのインフラ費用とカスタマーサクセスの人件費が入ります。また開発を外注している場合、その開発費用(=業務委託費)は、売上原価に入ります。SaaSビジネスは基本的に粗利率は高く、大体70%程度が求められます。
今回の基礎編はここまでです。上記のKPIを理解したら、次回実践編の記事では、これらのKPIをどのように作成、管理、運用していくのかを見ていこうと思います。
本記事で紹介したSaaSビジネスの主要KPI、ご自身でExcelやSpreadsheetを利用して作成・管理することも可能ですが、それだと手間がかかり、また比較対象などがなく、正しくKPIの計画設定ができているのか判断が難しいのではないでしょうか。
SaaSのプロがその知見を詰め込んだ事業計画作成SaaS「projection-ai」では、数クリックで事業計画に連動した形でKPIを作成・管理することが可能です。
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