11月5日(金)、スマートロック「<a href="https://akerun.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">Akerun</a>」を提供するPhotosynth社が新規上場を果たした。初値時価総額は214.8億円と公開価格を6％下回った。 同日公開された「<a href="https://ssl4.eir-parts.net/doc/4379/tdnet/2040660/00.pdf" target="_blank" rel="noopener noreferrer">事業計画及び成長可能性に関する事項</a>」から、同社の成長戦略を読み解いていきたい。 <h2 id="h9bc84660d1">N:NからN:1の世界へ</h2>同社の設立は2014年。共同創業者の河瀬氏はガイアックスに入社し、ソーシャルメディアマーケティング事業などを担当。同じく共同創業者の渡邉氏は、ソフトバンクで法人営業やPayPalとの合弁事業を立ち上げた。 外部株主には、グロービス・キャピタル・パートナーズやジャフコなどの独立系VCに加え、三井不動産やLINEなどの事業会社なども加わっている。 <img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/6869bde1ba5a46d488973afc59396f81/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-11-08%209.12.29.png" alt="">同社は「世界から、鍵をなくそう。」というビジョンを掲げ、プロダクトの開発・提供を行っている。人々が行き来する場所やコミュニティの数だけ、持ち歩く鍵やカードが増え、施錠・解錠の回数も増加する。 そのようにストレスが増えつつある世界を面白くする ”カギ” は、鍵をなくすことだという。テクノロジーを駆使して、個人を見分けることで自動で開閉するAkerunを提供。 物理キーをなくし、これまで「N:N」だったものを「N:1」にすることで、ストレスのない生活を実現するといったものだ。 <h2 id="ha8a4f7cb05">ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたクラウド型入退室管理システム</h2><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/4431e7c9b96d488f94cf64edaeeaf478/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-11-08%209.12.41.png" alt="">Akerunは、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた「HESaaS（Hardware Enabled Software as a Service）」なるものを提供する。既存の扉に設置するだけで、スマートフォンや交通系ICカードなどを使って、鍵の開け閉めが可能となる。工事が不要なため、簡単に取り付けられるのが特徴の1つだ。 freeeをはじめとした外部の勤怠管理システムとも連携できるため、勤怠のつけ忘れを防止することもできる。また、顔認証システムとの連携もできるため、よりセキュアな入退室管理ができる。 エリアや人、部署毎に時間限定の鍵を発行するできる機能などもある。また、入退室をリアルタイムで管理することができるため、（無断での）休日出勤や不審者の入室なども早期検知することができる。 <h2 id="hdb17e274fd">ARRは13.7億円、今期は30％成長を目指す</h2><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/5a1609ad603b443aa4f78329fd648d23/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-11-08%209.13.43.png" alt="">同社のARR（6月時点）は13.7億円と、開示している<a href="https://db.projection-ai.com/market" target="_blank" rel="noopener noreferrer">上場SaaS企業</a>の中では最もARRの規模が小さい。2016年から2020年までのCAGRは129％と急成長しており、今期は30％程度の成長率を見込んでいる。 前期の売上総利益率は82％、サブスクリプション売上比率は90％となっており、ハードウェアを扱っているにも関わらず、高い水準をキープしている。 Churn Rate（Gross Revenue）は1.5％と健全な水準となっている（ただし、コロナの影響を除いた数値となっている）。 6月時点での顧客数は3,700社以上。導入企業を見ると、野村不動産やキリンHD、ZOZOなど、名だたる企業が導入している。 アカウント登録数（3月時点）は91万人以上、1日あたりの開閉回数は98万回となっている。起点が異なるものの、単純計算すると1社あたり246名のユーザーを抱え、1社あたりの開閉数は1日265回となる。 <h2 id="hb38f6a720f">サテライトオフィスなど、新しいワークスタイルの需要を取り込めるかが成長の鍵</h2><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/0adf354921c04d04a7ebb4d15e3be89f/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-11-08%209.14.03.png" alt="">同社はどのようなターゲットに対して、どのようなソリューションを提供しているのか。 「Akerun Pro」は主に中規模オフィスをターゲットとしている。背景には、改正個人情報保護法により、中小企業での入退室管理のニーズが急増していることが挙げられる。 しかし、従来のオンプレ型スマートロックは高価なため、クラウド型のAkerunが支持されているというわけだ。 一方、大企業は大手メーカーが提供する工事が必要なオンプレモデルを利用しているという。それに対して、同社の「Akerunコントローラー」は無線通信なため、電気工事技士が不要となる。加えて、クラウド型なのでSlerも不要かつアップデートもリアルタイムに実施することができる。 また、1月には国内最大手錠前メーカーのMIWA社と提携。今後は家庭向け市場も開拓していく予定だ。確かに住宅は大多数が物理キーを利用している。そのため、市場の開拓余地は大きいが、競合も多く、どのように差別化するかが重要となりそうだ。 <img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/a04b4a3c1c144a35beaf036be90dd2a0/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-11-08%209.13.54.png" alt="">オフィス・商業施設 / 認証マーケットにおけるSAMは4.5兆円。そこに住宅市場を足したTAMは6.4兆円と同社は見積もっている。また、今後はキーレスプラットフォームによる認証・データ市場によって、マーケットをより拡大をさせていく予定だ。 当たり前だが、MRRを拡大させるためには、顧客数と顧客単価を増加させていく必要がある。 顧客数の増加をするべく、SMBからエンタープライズへの拡張、全国展開、不動産企業をはじめとした企業とのパートナーシップ推進を掲げている。 また、顧客単価の拡大においては、1社あたりの導入台数の拡大、契約あたりの拠点・空間の利用推進を掲げている。いわゆる「Land&amp;Expand」と呼ばれる戦略だ。また、勤怠管理システムや来訪管理システムなど、周辺領域におけるソリューションを提案することで、クロスセルも積極的に行っている。 MRRを拡大させるべく、人材にも投資をするとしている。昨年度は111名だった従業員を、今年度に186名まで大幅に増やす方針だ。人員を増やすことで、地方拠点の活用、販売パートナーを支援する専任チームを強化する方針だ。 今期の売上高は前年比+28.5％の15.1億円、営業損益は-10.3億円を見込んでいる。サブスクリプションビジネスであるため、積極的に先行投資を行っていく予定だ。 パンデミックによりリモートワークが普及したが、新規感染者数の減少に伴い、徐々にオフィスに人が戻りつつある。また、オフィスだけでなく、自宅や好きな場所で働ける「ハイブリッド型」のワークスタイルも定着しつつある。 同社いわく、都心のオフィス需要については不透明感があるものの、郊外におけるサテライトオフィス需要増の可能性が高まっているそうだ。そのような新しいワークスタイルの需要を取り込めるかがどうかが、成長の ”カギ” を握っていると言えそうだ。 Text by Kakeru Miyoshi（<a href="https://twitter.com/saas_penguin" target="_blank" rel="noopener noreferrer">@saas_penguin</a>） ＝＝＝ 「<a href="https://db-lp.projection-ai.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">projection-ai:db</a>」は、VCをはじめとした投資家やSaaS上場企業のためのデータベースです。SaaS市場のトレンドや上場企業のメトリクスが ”素早く簡単に” 把握できるため、情報取得コストを大幅に削減します。Googleアカウントがあれば、すぐに無料プランをご利用いただけます。

11月5日(金)、スマートロック「Akerun」を提供するPhotosynth社が新規上場を果たした。初値時価総額は214.8億円と公開価格を6％下回った。同日公開された「事業計画及び成長可能性に関する事項」から、同社の成長戦略を読み解いていきたい。

クラウド入退室管理システム「Akerun」を提供するPhotosynthがIPO

本日、防犯カメラ・クラウド動画サービスを手がけるセーフィーがマザーズへ上場した。初値は公開価格を38％上回り、時価総額1,646億円で堂々デビューを果たした。 防犯カメラと聞くと、すでに成熟市場のように思えるかもしれない。今回は、同社がどのような事業を展開しているのか、そして、どのような成長戦略を描いているのか、<a href="https://ssl4.eir-parts.net/doc/4375/tdnet/2027562/00.pdf" target="_blank" rel="noopener noreferrer">事業計画及び成長可能性に関する事項</a>から読み解いていきたい。 <h2 id="hcb1e3bb9d8">技術力の高さが垣間見える創業メンバー</h2><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/9b04cc9e246c473c890c178927292538/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-09-29%2020.56.54.png" alt="">同社の設立は2014年で、創業者は佐渡島隆平氏（1979年生まれ）。Forbes Japan「日本の起業家ランキング2021」で第1位となったので、知っている方も多いだろう。同氏は大学在学中、起業を経験。卒業後はソニーネットワークコミュニケーションズなどを経て、同社を設立した。 創業メンバーを見ると、ソニー出身者が多く、技術力の高さが窺える。7月末時点で従業員数は193名で、約4分の1はエンジニアとなっている。 資本業務提携を目的として、ソニーネットワークコミュニケーションズやキヤノン、NECなどから累計33億円を調達した。直近ラウンドは2019年10月に実施されたシリーズB。その時点での評価額は<a href="https://initial.inc/companies/A-16173" target="_blank" rel="noopener noreferrer">207億円</a>となっていることから、この2年間で評価額は約8倍となった。 <h2 id="hab90699cf6">高画質な録画を、いつでもどこでもリアルタイムに</h2><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/1be99e49533a40dfbb0eb4a6592e4807/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-09-29%2020.56.45.png" alt="">同社は「映像から未来をつくる」というビジョンを掲げ、クラウド録画型映像プラットフォーム「<a href="https://safie.link/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">Safie</a>」を提供している。 主力製品は「Safie Pro」というクラウド録画サービスだ。カメラで撮影した映像データをクラウド上に保存し、閲覧することができる。 その他にも屋外用カメラの「Safie Go」シリーズ、小型ウェアラブルカメラの「Safie Pocket」シリーズなど、幅広くナインナップを展開している。 また、顔認証による解錠・入退室管理の「Safie Entrance」、小売店舗などの来店者分析ができる「Safie Visitors」なども提供している。 Safieは従来の監視カメラと比べて、高画質かつ共有が可能なことが特徴である。従来の監視カメラは画質が粗かったり、現場のモニターでないと映像が確認できないなどの課題が存在する。 しかし、同プロダクトは、高画質かつ滑らかな映像を録画できることに加え、映像はリアルタイムに、いつでもどこでも閲覧することができる。 また、通信の暗号化によりセキュアな環境で録画できたり、従来の監視カメラよりも低コストで導入できることも特徴の1つだ。 カメラは自社ブランドだけでなく、他社ブランドのものにも対応。その数、なんと1,000種類以上にも上る。 Safieは、幅広い業界で利用が進んでいる。小売・飲食業界では、ファーストリテイリング（ユニクロ・GU）やビックカメラ、建築・不動産業界では鹿島建設や三井不動産、インフラ業界では関西電力や東京電力などが代表的な導入企業だ。 尚、ユースケースは防犯にとどまらない。例えば、焼肉ライクにおいては、接客オペレーションの改善にも活用されている。店員の接客映像を分析することで、接客の質を高めているそうだ。 また、小売店では店舗内の映像を分析することで、顧客の購買動向や属性分析、レジ前の混雑状況を把握することもできるそうだ。 <h2 id="h82d91c7b23">多様なアプリケーションを提供し、NRRは138％に</h2><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/ad7e55650d35412f91d5867df69c56b5/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-09-29%2020.56.34.png" alt="">同社のビジネスモデルは、カメラの導入をスポット収益、クラウドサービスの利用料金をリカーリング収益として受け取るモデルだ。低価格でカメラを販売し、クラウドサービスを長期間利用してもらうことで回収する構造となっている。 前期の売上高は、50.5億円と前年の2.5倍以上になっており、トップラインが急速に拡大している。また、今期（2Q）の売上高は38.1億円と、好調に推移している。 6月末時点で、ARRは45.5億円、課金カメラ台数は12.9万台となっている。 NRR（直販のみ）は138％と高い水準を誇り、既存顧客からのアップセルも好調に進んでいるようだ。同社は多数のアプリケーションを提供しているため、カメラを販売した後もアップセルしやすい環境にある。 月次解約率（Customer Churn）は、直販で0.9％と低い水準になっている。しかし、パートナー経由（OEM含む）の顧客に関しては2.9％と、やや高くなっている。株主を見てもわかるように、同社はパートナーシップ戦略を積極的に進めてきた。その結果、パートナー経由での販売比率は60％（昨年末時点）になっている。パートナー経由の解約率をどのようにコントロールするかが、ARRを伸ばす上で重要な鍵となりそうだ。 トップラインは伸びているが、グロスマージンは35％と、SaaS企業としては低い水準にある（中央値は<a href="https://db.projection-ai.com/market" target="_blank" rel="noopener noreferrer">71％</a>）。これはカメラというハードウェアを扱っているため、当然とも言える。 今期の予想だが、ARRは56.5億円（前年比+71.7％）、課金カメラ台数は15万台（前年比+48.5％）、グロスマージンは39％としている。 <h2 id="hbf3a7a2c5d">SaaSからPaaS、そして、VDaaSへ</h2><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/d0ea5025c3234de5b28241fc74664159/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-09-29%2020.56.18.png" alt="">最後に、今後の成長戦略について触れておく。 同社を取り巻く環境として、労働人口の減少、コロナ禍によるリモート推進、そして、映像を活用したDXへのニーズが挙げられる。同社の映像プラットフォームを活用すれば、低コストで高度なデータ活用を効率的に実施できる。 今後の成長余地として、国内のネットワークカメラ台数で2,863万台、グローバルでは約4億台と捉えている。現在の稼働カメラは12.9万台なので、国内シェアは0.5％、グローバルでは0.03％と、拡大余地はまだまだ大きい。 成長を実現するために、短期的には従来プロダクトの販売拡大やパートナー連携による顧客開拓にフォーカスすると言う。そして、中長期的には顧客規模やエリアの拡大、映像プラットフォームとしてのプレゼンス向上を目指すとしている。 具体的には、営業・サポートを強化することで、既存顧客への利用浸透を進めると同時に、個人向けにも販路を拡大する予定だ。また、パートナーとの提携によりエリアを拡大するとともに、アプリケーションをより拡充させることで、他業種への展開も視野に入れている。 また、近年のトレンドとして見られるようなマーケットプレイスにも挑戦する。Safieのプラットフォーム上に、自社・他社アプリを掲載できる機能を2023年以降に提供しようと検討している。 最終的には、飲食店、商業施設、工事現場、駐車場、ゴルフ場、学習塾など、あらゆる現場のデータを収集し、そのデータを活用したソリューションを提供するIoTエコシステムを構築する構想を掲げる。 あらゆるデータを活用することで、駐車場であれば駐車料金の精算、ゴルフ場であればゴルフスイングの矯正、学習塾であれば動画配信など、ユースケースが広がる。SaaSからVDaaS（Video &amp; Data as a Service）へシフトしていくという。 Written by kakeru miyoshi（<a href="https://twitter.com/saas_penguin" target="_blank" rel="noopener noreferrer">@saas_penguin</a>） ＝＝＝ <a href="https://db-lp.projection-ai.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">projection-ai:db</a>は、SaaS市場規模や上場企業のメトリクス（ARRやChurnなど）を素早く、簡単に把握することができるデータベースです。無料版の利用は<a href="https://db-lp.projection-ai.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">こちら</a>から。フリートライアル（7日間）を希望される方は、<a href="https://meetings.hubspot.com/miyoshi-projection-ai/aidb" target="_blank" rel="noopener noreferrer">こちら</a>からデモをお申込ください。

本日、防犯カメラ・クラウド動画サービスを手がけるセーフィーがマザーズへ上場した。初値は公開価格を38％上回り、時価総額1,646億円で堂々デビューを果たした。防犯カメラと聞くと、すでに成熟市場のように思えるかもしれない。今回は、同社がどのような事業を展開しているのか、そして、どのような成長戦略を描いているのか、事業計画及び成長可能性に関する事項から読み解いていきたい。

2年間で評価額が8倍のクラウドカメラ「セーフィー」がIPO

本日、3つのSaaS事業を手がけるプラスアルファ・コンサルティングがマザーズへ上場した。初値は公開価格を18.3％上回り、時価総額1,089億円で堂々デビューを果たした。今回は、<a href="https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08734/55dea816/6ffc/4748/8f12/9c4a9dd439d6/140120210628457371.pdf" target="_blank" rel="noopener noreferrer">成長可能性に関する資料</a>から同社の事業内容や今後の成長戦略を紐解いていく。 <h2 id="hb06ca0f627">高い技術であらゆるビッグデータを「見える化」</h2><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/dba9bf0ec07a45fc9b9092591df8ae74/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-07-30%2014.29.22.png" alt="">スマホやSNSの普及により、世の中にはありとあらゆる情報が溢れかえるようになった。 そんな中、同社は、顧客の声や購買履歴、人事情報などのビッグデータを、自然言語処理やテキストマイニングなどの技術を用いて「見える化」する事業を行っており、3つのSaaSプロダクトを展開している。 祖業とも言えるのが、マーケティング領域におけるSaaS「<a href="https://www.mieruka-engine.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">見える化エンジン</a>」。これはアンケートやSNSにおける顧客の声などを、テキストマイニングを用いて分析することで、サービス改善や新商品の開発に活用することができる。主にカスタマーセンターやマーケティング部門がターゲットユーザーだ。 国内にも同様のツールがいくつか存在するが、幅広いデータソースに対応しているほか、自然言語処理技術の高さなどが評価され、テキストマイニングツールでシェアNo.1だという。 21年3月末時点でのMRRは1.3億円、契約件数は458社、ARPUは28.3万円。ストック売上高比率は93.8％と高く、解約率（Gross Revenue Churn）は1.2％と低水準だ。 CRM領域で展開しているのが「<a href="https://www.customer-rings.com/https://www.customer-rings.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">カスタマーリングス</a>」。顧客属性や行動履歴などのデータを統合・分析することで、顧客と最適なコミュニケーションを実施可能にするツールだ。アパレルや健康食品をはじめとするEC事業者や小売業などが導入しており、オンラインマーケティングの企画・運用をサポートしている。 直感的なUIを提供しているほか、顧客一人ひとりの行動を分析・可視化できる多様な機能、そして、メール・SMS・チャットなどのマルチチャネルに対応している点が特徴的である。 カスタマーリングスのMRRは1.1億円、契約件数は297社、ARPUは35.3万円、ストック売上高比率は95.7％。解約率は0.9％とこちらも低い水準となっている。 そして、最後に紹介するのがHR領域におけるSaaS「<a href="https://www.talent-palette.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">タレントパレット</a>」だ。社員のスキルや適性、評価などの人事情報を一元管理し、見える化することで社員教育などに活用することができる。 社員の最適配属や離職者の予測分析、採用効率を高める機能などが特徴で、社員のパフォーマンスやエンゲージメント向上に課題を抱えている人事部門などで導入が進んでいる。 MRRは2億円、契約社数は568社、ARPUは34.6万円となっている。ストック売上高比率は72.6％と他のSaaSと比較すると低い水準にあることから、現在はオンボーディングに注力していることが窺える。解約率は0.5％と全プロダクトで最も低い水準にある。 <h2 id="h819017011a">培った技術をHR領域へ展開、タレントパレットが急成長</h2><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/0ebc01daba9248e7b210a534dce04b40/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-07-30%2019.41.33.png" alt="">同社の前期売上高は47.2億円（前年比+37.4％）、営業利益は14.5億円（営業利益率：30.3％）と利益を出しながらも高い成長を続けている。2015年9月期から前期までのCAGRは33.2％だ。 中でも、同社の成長を牽引しているのは、タレントパレットだ。前期売上高は18.8億円で前年比2.4倍となっている。 タレントパレットは2016年9月期から始まった最も後発な事業だが、すでに売上全体の約4割を占める存在となっている。また、これだけ成長しているにも関わらず、すでに利益を出しているから驚きだ。 FY19.1Q〜FY21.2Qにおける契約件数推移を見ていくと、見える化エンジンは -12.1％、カスタマーリングスは+12.9%なのに対し、タレントパレットは+361.8％と大幅に顧客が増加していることがわかる。 同じくARPUの推移を見ていくと、見える化エンジンは+21.5％、カスタマーリングスは+14.6%、タレントパレットは+38.4とこちらも力強い成長を続けている。 ストック売上高比率は64.8％だったものが、72.6％まで高まってきており、上昇の余地はまだあると言える。 タレントパレットが急成長している背景には、同社がこれまでマーケティング領域において培った分析技術をHR領域へ展開したことにある。顧客の声を分析し活用するノウハウをHR領域へ適用することで、勘や経験に頼った人事戦略から脱却することを支援している。つまり、「顧客の見える化」を「社員の見える化」にした訳だ。 また、同社のプロダクト開発サイクルにも成長の秘訣がある。SaaS企業では当たり前となりつつあるが、開発チームが作ったプロダクトをセールスチームが営業、CSチームで得たフィードバックを開発チームへ共有することでプロダクトを改善するという「PAC（Plus Alpha Consulting）サイクル」と名付けられたサイクルを高速で回している。 このサイクルを高速に回し、プロダクトを進化させ続けることによって、ARPU向上や解約抑止につながり、競合優位性も高まる。タレントパレットでは、2016年9月のリリースからバージョンアップは40回、実装機能は2,300件以上（1日1機能以上のペース）と頻繁にバージョンアップを行っている。 <h2 id="h8f1e3ac336">マーケティング・HR領域におけるSaaSのポテンシャル</h2><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/41e2bc9542f84d01ab808bc74fe8044e/838b52760a764fa88911b7e3088e1de6/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-07-31%208.08.38.png" alt="">最後に、各領域における市場規模と同社の成長戦略について触れていく。テキストマイニング領域では未だパッケージが過半を占めるものの、徐々にSaaSへシフトしていくと予想されている。2024年には市場規模が64億円になると推定。他の領域と比較すると緩やかな成長となるが、同社のシェアはすでに40.6％（2019年実績）とダントツ首位となっており、今後はこのシェアを維持できるかが重要だ。 今後は、顧客体験を可視化できるプラットフォーム機能を拡充することに加え、カスタマーサクセスを強化するとしている。具体的には、コンサルティングチームを強化することで顧客内でのサービス利用を浸透させ、アップセルを通じてARPUの向上を狙っている。 分析対象のデータを拡充させることも、ARPUを向上させる施策の1つとして実施する予定だ。今期末の顧客数は前期末を下回るという予想を出しているが、マーケティング施策を改善することで新規顧客の獲得を目指す。 マーケティングプラットフォーム領域においてはほとんどがSaaSとなっており、2024年には205億円の市場規模になると推定している。現在のシェアは12％となっており、まだ拡大の余地はありそうだ。 現在は主な顧客がEC事業者だが、今後は他業種の企業にも使ってもらえるようマーケットを開拓していく。機能面では、マーケティング施策による顧客への影響を見える化する「顧客実感機能」を拡充することで、解約を抑止する予定だ。また、LINEやSMSなど、外部システムとの連携を充実させることで、プロダクトの付加価値を高めると同時にARPUも上げていく方針だ。 人材管理ソフトにおける市場規模は最も成長率が高く、2024年には410億円になると予想されている。現在のシェアは7.2％と高くないことから、こちらもポテンシャルの高い領域と言えるだろう。 マーケティング思考から生まれた機能をタレントパレットに実装したり、コンサルタントによる活用支援を行うことで差別化を図り、シェアの向上を目指す。HR領域の中でも人事部門だけでなく、経営層や事業部門でも活用される機能を実装していく予定だ。 加えて、今後は「科学的人事戦略」をキーワードに、人事情報を戦略活用する意思決定プラットフォームとしていく方針だ。科学的人事を啓蒙することで解約を抑止すると同時に、HR周辺領域のサービスへ進出することで、顧客数及びARPUを上昇させていく狙いだ。人事評価やスキル、適性などの人材情報を活用すれば、人材紹介や研修、福利厚生などのサービス展開が可能となるだろう。 FY21.2Q時点での顧客数は568社であり、今期の顧客数は616社（前期比+43.3％）を見込んでいる。また、潜在顧客数は59,537社（現在の約100倍）と大きなポテンシャルを秘めている。 ご存知の通り、HR領域はSmartHRやHRBrain、カオナビなど名だたるプレイヤーが多い。社員の見える化や人事考課などの人事DBはすでにレッドオーシャンであるため、同社はあくまで人事異動シミュレーションや健康経営指標、各種サーベイなどのタレントマネジメント領域をターゲットとしている。経営層・事業部門向けのタレントマネジメントシステムというユニークな存在となれるかどうか、今後も注目したい企業だ。 Written by kakeru miyoshi（<a href="https://twitter.com/saas_penguin" target="_blank" rel="noopener noreferrer">@saas_penguin</a>） ＝＝＝ projection-ai:db は、SaaS上場企業のメトリクスを確認したり、他社比較することも可能なデータベースです。無料登録は<a href="https://db-lp.projection-ai.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">こちら</a>から projection-aiは、SaaSの事業計画がミスなくスピーディーに作成できるツールです。詳細は<a href="https://projection-ai.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">こちら</a>から

本日、3つのSaaS事業を手がけるプラスアルファコンサルティングがマザーズへ上場した。初値は公開価格を18.3％上回り、時価総額1,089億円で堂々デビューを果たした。今回は成長可能性に関する資料から同社の事業内容や今後の成長戦略を紐解いていく。

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