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SaaS事業を立ち上げる際、真っ先に考えるべきは「事業計画」です。しかし、いざ取り組もうとすると、「何から手を付ければ良いのかわからない」と感じる方も多いのではないでしょうか?特に、目標設定やKPIの設計は、初めての方にとって大きなハードルになりがちです。
そこでこの記事では、SaaS事業計画を「ARR」という重要な指標を中心に逆算して考える方法を解説します。ARR(年間経常収益)を軸に計画を立てることで、事業の全体像が見えやすくなり、具体的な目標設定や各部署のKPIに落とし込むことが可能になります。
この記事を読みながら、以下の3つを明確にすることで、最低限の事業計画を完成させることが目標です:
これらを基に、顧客獲得ペースや採用プラン、KPIを設定する方法をステップごとに解説していきます。
SaaS事業計画を始めるにあたって、最初に明確にしておきたいのが以下の3つの要素です。これらを定めることで、事業の方向性が見えやすくなり、その後の具体的な計画もスムーズに進められます。
ARR(年間経常収益)は、SaaS事業の成長を測る最も重要な指標です。目標ARRを適切に設定することは、事業計画全体の土台を築くうえで欠かせません。以下のポイントを参考に、現実的かつ成長を見据えた目標を設定しましょう。
設定例 その1:1億円、10億円、100億円
ARR 1億円:プロダクトのフィット確認フェーズ
ARR 10億円:成長フェーズ
ARR 100億円:スケールフェーズ
設定例 その2:T2D3などの理想的な成長モデルを参考にする
SaaSスタートアップの理想的な成長モデルとして、T2D3(Triple, Triple, Double, Double, Double)があります。これは、ARRを以下のように成長させることを目指す指標です:
年次成長目標(例)
このモデルを参考に、成長目標を設定すると計画がより具体的になります。
設定例 その3:創業初期のスタートアップの場合
創業初期のスタートアップでは、ARR 1億円以上を目指す前に、まずはARR 1,000万円~3,000万円を目標にするのがおすすめです。以下のステップで段階的に進むと良いでしょう:
ヒント:ARRの5倍が時価総額の基準
2024年現在、SaaS企業の時価総額は一般的にARRの5倍とされます。目標ARRを設定する際、「企業価値を10億円にしたい」場合、ARRの目標は2億円となります。この方法で逆算するのも有効です。
目標ARRは以下の観点で設定するのが良いでしょう:
これにより、事業計画全体が具体化し、次のステップに進みやすくなります。
目標ARRを設定したら、それをいつまでに達成するかを決めます。この期限は事業計画全体のスケジュールを左右する重要な要素です。
現実的な目標と無謀な目標の違い
一般的なタイムライン
最後に、提供するソフトウェアの平均顧客単価(ARPA: Average Revenue Per Account)を設定します。この金額は、顧客数や収益モデルを計画する際の基準となります。
エンタープライズ向けとSMB向けの違い
競合製品の参考価格を調べる方法
同業界や競合製品の価格を調べ、自社の提供価値と比較して設定します。
例:ARPAを決めるケース
目標ARRと平均顧客単価(ARPA)が決まったら、次は必要な顧客数を計算します。顧客数を具体的に把握することで、営業やマーケティングの目標が見えやすくなります。
必要な顧客数を計算する公式はシンプルです:
公式:必要な顧客数 = ARR ÷ ARPA
例1(エンタープライズ向け)
例2(SMB向け)
この計算により、自社が目標を達成するために必要な顧客数が明確になります。
顧客数がわかったら、それを期限内にどう分配するかを考えます。期限が12ヶ月の場合、単純に割り算するのではなく、スタートアップ特有の成長カーブを考慮することが大切です。
成長カーブの例
例1(エンタープライズ向け、10社目標)
例2(SMB向け、417社目標)
次章では、この計画をさらに分解し、各フェーズのKPI設定や採用プランとの関連を詳しく解説していきます。
顧客獲得ペースや目標ARRが明確になったら、それをさらに分解し、営業やマーケティングの各フェーズで達成すべきKPIを設定します。この章では、KPI設定の具体例を示しながら、計画を実行可能な形に落とし込む方法を解説します。
顧客獲得ペースを基に、営業やマーケティングのリソースを逆算します。例えば、必要なリード数や商談数を以下の公式で求めます:
リード数 = 必要顧客数 ÷ 商談化率 ÷ 契約率
例1(エンタープライズ向け、契約率50%、商談化率25%の場合)
例2(SMB向け、契約率20%、商談化率10%の場合)
この計算を通じて、営業・マーケティングに必要なリソースが見えてきます。
SaaSでは解約率(Churn Rate)を無視すると、目標ARRを達成しても維持が難しくなる場合があります。以下の方法で解約率を計算し、KPIに組み込みましょう。
解約率の影響を考慮する公式
例:解約率を考慮した顧客数
解約率が高い場合、新規顧客獲得だけでなく、既存顧客の維持に力を入れる必要があります。
目標ARRに基づいて採用プランを設計する際、重要な指標となるのが一人当たりARRです。これにより、採用のタイミングや人件費の妥当性を判断できます。
公式:一人当たりARR = ARR ÷ 総従業員数
ベンチマーク例
採用計画のシミュレーション
これを基に、「採用人数が目標ARRに対して適切か」を検証しながら計画を進めます。
創業初期では、資金調達を前提に人件費を先行して投資する場合もあります。この際、以下の点を考慮しましょう。
資金調達額から必要ARRを逆算
Burn Multipleを活用した採用判断
SaaS事業を健全に成長させるには、効率よく顧客を獲得し、長期的に収益を生み出す仕組みが必要です。そのために欠かせないのが、CAC(顧客獲得コスト)、LTV(顧客生涯価値)、そしてBurn Multiple(資金消費効率)です。この章では、それぞれの指標の計算方法と活用方法を解説します。
CACは、新規顧客を1件獲得するためにかかるコストです。広告費、営業人件費、イベント費用などを含めたマーケティング・営業活動全体のコストを計算します。
CAC = 顧客獲得コスト ÷ 獲得顧客数
例:CACを計算するケース1ヶ月のマーケティング費用:100万円
CACの目標値SMB向け:1~5万円程度
含める代表的な費用
CACが高すぎる場合は、広告効率を見直したり、営業プロセスの改善を検討します。
LTVは、1人の顧客が生涯でどれだけの収益をもたらすかを示す指標です。解約率や顧客単価を考慮して計算します。
公式:LTV = 平均顧客単価 × 利用期間
例:LTVを計算するケース
LTVを最大化する方法
CACとLTVのバランスは、SaaS事業の成否を左右します。理想的な比率は、CAC:LTV = 1:3(LTVがCACの3倍以上)です。
例1:CAC/LTV比が良好なケースCAC:10万円
例2:CAC/LTV比が悪化するケースCAC:10万円
Burn Multipleは、ARRを増加させるためにどれだけの資金を消費しているかを示す指標です。効率的な成長を測るために重要です。
公式:Burn Multiple = 営業損失 ÷ ARR増加額
例:Burn Multipleを計算するケース
目標とするBurn Multiple
次章では、ARR目標を決めるもう1つの方法として、時価総額から逆算するアプローチを紹介します。
SaaS事業を成功させるための事業計画は、複雑な要素が絡み合います。しかし、ARR(年間経常収益)を中心に据え、逆算する方法を用いれば、シンプルかつ実践的な計画を作ることができます。
本記事では、以下のステップを通じて事業計画を組み立てる方法を解説しました:
事業計画を立てることはゴールではなく、スタートラインです。実際に行動に移し、試行錯誤しながら計画を改善していくことで、事業は成長します。まずはこの記事のステップを基にスプレッドシートを作成し、ARR目標と顧客数、KPIを具体的な数字に落とし込んでみてください。
事業計画を立てる際、多くの時間をスプレッドシートやエクセルの計算シート作成に費やしてしまうことがあります。しかし、重要なのは指標をウォッチし続け、実際の事業の成長を考えることです。スプレッドシートを作るためだけに貴重なリソースを使うのは、効率的とはいえません。
Projection では、ARR・期限・ARPAを入力するだけで、自動的に6年間分の事業計画やKPIを計算できます。これにより、スプレッドシートを作成する手間を省き、より多くの時間を戦略や実行に集中することが可能になります。

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