SaaSビジネスにおいて、ARRはビジネスモデルの根幹となるメトリクスである。
ARRの増減には、ビジネスの成長に直結する新規顧客の獲得と既存顧客の解約が織り込まれている。サブスクリプションで課金するSaaSビジネスの定期収益が反映され、導入支援に関わるコンサルティングなどの単発型サービスによる収益は含まないため、SaaSビジネスの収益力を正確に測ることができる。
ARRは下記の計算式で算出する。
ARR = 事業年度の最終月におけるMRR × 12
例えば、MRRが5億円の場合、ARRは60億円(5億円 × 12)となる。
また、MRRは下記の計算式で算出する。
ある月のMRR = 前月のMRR + 当月の新規顧客獲得によるMRR増加分 + 既存顧客のアップセル・クロスセルによるMRR増加分 - 既存顧客のダウングレードによるMRR減少分 - 既存顧客の解約によるMRR減少分
ARRをTriple(3倍)、Triple(3倍)、Double(2倍)、Double(2倍)、Double(2倍)に成長させていく「T2D3」モデルのように、SaaSビジネスの成長の勢いはARRの推移に表れる。
参考:「今さら聞けない「T2D3」-理想的なSaaSの成長モデルを紐解く-」
ARRの推移が増加傾向にある場合、ビジネスは順調に成長していると言える。
一方、ARRの推移が減少傾向にある場合、既存顧客の解約やダウングレードによるMRR減少を新規顧客獲得やアップせる・クロスセルによるMRR増加がカバーできていないことを示す。
以下に、projection-ai:dbに掲出されているSaaSビジネスデータから、5社のARR推移と関連するメトリクスをピックアップしていく。
freee
40%以上のARR成長率を維持。ユーザー数の力強い伸びと着実な増加傾向にあるARPUが、ARRの成長を支えている。
Appier Group
前年同期(2020年3Q)の30.5%から3Q 47.4%へと、ARR成長率が大幅に増加。解約率は1%以下と低い水準に抑えられており、新規顧客獲得がARRを押し上げている。
UZABASE
20%前後のARR成長率で堅実に推移。顧客数とARPAのそれぞれの成長度合いが、ARRの成長に反映されている。
Money Forward
今回ピックアップした中で、最も長期間のARR推移を見ることができるMoney Forward。直近のARR成長率は33.4%。最新のARPA成長率はおとなしくなっているものの、顧客数の伸びがARRの成長に繋がっている。
Photosynth
直近2Q連続でARR成長率が増加し、30%台前半から後半へと成長。契約者数とARPUの成長率の推移が、ARRの成長とリンクしている様子が見てとれる。
このように、ARRはSaaSビジネスの収益力を示すとともに、その推移によって成長度合いを測ることができる。
ユーザー数の伸びや解約率、ARPAの推移とあわせて見ることで、各企業がどのようにビジネスを成長させているかを推し量れるので、SaaSビジネスの特徴を捉える軸として着目いただきたい。
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