SaaSビジネスに日々向き合っていると様々な問題に直面する。
中でも、営業面においてはやはりいかにリードを獲得するか、ということが大きな問題ではないだろうか。
今回の記事では、リードを獲得するために「どうやってマーケティング戦略を考えればよいのか」ということについて、私なりの意見も踏まえて解説していく。
ここで先に伝えておくと、本記事では数字については触れない。SaaSマーケティングにおいては、LTV、CAC、ARPU、Churn Rate、CPAなど数多くのメトリクス (https://blog.projection-ai.com/saasmetrics) と、メトリクスを用いたわかりやすい解説が既に数多く存在している。細かく数字を分解し、どうすればUnit Economics>3を実現すればよいのか、などということは既に語り尽くされている。
その上で、今マーケターたちが頭を悩ませているのは、そういった数値がどうこうということではなく(数字も勿論大事であり前提)、「どうすれば見込み顧客に響くマーケティングメッセージを打ち出すことができるのか」「実際にどんなマーケティング施策を打つべきなのか」ではないだろうか。
本記事では、そういったマーケティングメッセージとそれに付随する施策をどのように考えればよいかについてまとめる。
そもそもビジネスとは、社会に対するコミュニケーション活動であると捉えられる。
企業は「こういう生活をしませんか」「こういう利便性を獲得しませんか」というメッセージを、商品・サービスというメディアを通じて発信しているのだ。そのメッセージに対して顧客からの支持や共感が生まれれば、その対価として代金をいただくことになる。つまり、売上は、発信したメッセージに対するマーケットからの共感の総量だ。
このように考えるとマーケティング戦略の設計で考えるべきことは、「誰に」「何を(どんなメッセージを)」「どのように」届けるかを設計するという非常にシンプルな要素に還元することができることがわかるだろう。
マーケティング戦略を設計するにあたってまず一番最初に考えなくてはいけないのは、誰を顧客とすべきか、だ。ここを間違えては何も始まらない。
マーケティング戦略を考え始めているということは、既にProduct Market Fitが一定達成されており、誰にどんな価値で売るべきかが見えているということだと思われるため、ここでは、その決め方までは解説しない。しかし、プロダクトが狙おうとしている顧客(市場)の状態によって、打ち出すべきマーケティングメッセージが異なるため、その点について解説したい。
顧客(市場)の状態は、そのプロダクトの競合がどの程度存在するかによって、大きく3つのステージ (①導入期、②成長期、③成熟期) に分かれる。
誰もそのサービスを知らない状態。自社プロダクトの競合は存在せず、顧客が抱える課題や願望も潜在的であり、啓蒙が必要。このステージにおけるマーケティングのテーマは「顕在化」である。いかに顧客が潜在的に感じている課題を浮き彫りにするかが重要だ。
打ち出すメッセージは、ストーリー型(トレンドから魅力を伝える)か、バスケット型(顧客が知ってる会社・サービスと相似形で魅力を伝える)で考えると良い。
サービスの知名度が上がり市場が拡大、競合が参入してくる状態。顧客は既に明確な課題を認識しており、複数の会社に問い合わせを行い比較検討を行う。このステージにおけるマーケティングのテーマは「一般化」である。いかに自社プロダクトが"一般的に"使われているものなのか、を伝えることが重要だ。
打ち出すメッセージは、モデルケース型(事例から魅力を伝える)か、セレクション型(権威から魅力を伝える)で考えると良い。
売上がピークを迎え、マーケティング投資の効率が下がってくる状態。Total Adressable Market (TAM) の伸びが鈍化し、互いにシェアを奪い合うことしかできなくなっている。このステージではそもそもマーケティングに力を入れるというよりも、現状の顧客群を維持しつつ、新しい価値を模索することが重要だろう。テーマは「多角化」である。
新しい価値を考える時のポイントは、アンチテーゼ型(競合との違いから魅力を伝える)、パーソナル型(多様な顧客のニーズを踏まえ、多様な魅力を伝える) で考えると良い。
このように、設計フェーズ(1)では狙いたいターゲット(誰に)が定まっていることを前提として、そのターゲットのいる市場がどのステージかを踏まえて、それぞれマーケティングで打ち出すメッセージを検討する。
「どのように」では、「誰に」「何を」で決めたマーケティングメッセージに合わせて具体的な施策を考えていく。マーケティングの施策を考えるときに使うフレームワークというと「4P (Product、Price、Place、Promotion)」を思い浮かべる方も多いと思うが、ここでは新しいフレームワーク「4S (Specific、Schedule、Symbol、Share)」を考案したい。
実際にマーケティングを考えるときに、4Pを思い浮かべるとわかるが、具体的に何をすればよいかがイメージしづらい。
現代には、WEBサイト、MA (マーケティングオートメーション)、検索広告、イベント、オウンドメディアなど数多くの打ち手が存在している。具体的な施策を考えるときには、この4Sが役に立つだろう。
①Specific:マスではなくパーソナルなメッセージを伝える → MAなど
②Schedule:場所ではなく時間を占有する → オウンドメディアなど
③Symbol:価格ではなく統一されたデザインで購買意欲を高める → クリエイティブ (広告) など
④Share:営業のトークではなく顧客のクチコミで影響を与える → イベントなど
最終的に、戦略を設計するためには設計(1)で解説した「誰に」「何を」の考えと合わせ、下記のような表で整理するとマーケティング戦略をたてやすくなる。
今回はマーケティング戦略の設計について解説した。
筆者は個人的に、マーケターの仕事が面白いのは、数字の分析というロジカルな部分と、クリエイティブな発想でマーケティングキャンペーンを創造するという感覚的な部分が同居しているからだと考えている。
事業計画やマーケティングプランを考える際には、是非本記事で紹介したフレームを使いクリエイティブな発想に挑戦してみていただきたい。
ただ、一方で数字の分析や計画立てばかりに時間がとられ、創造的な時間が確保できないということもあるだろう。そういった際には、SaaS事業計画をワンクリックで簡単に立てることができるprojection-aiなどのサービスを使ってみるのも良いだろう。すぐに無料版を利用することが可能なので、是非参照してみてほしい。
Written by Keisuke Okita (@kskokita)
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