はじめに

SaaS市場は急速に拡大し、特にサブスクリプション型ビジネスモデルが注目されています。その中で注目されている指標が「40%ルール」です。このルールは、企業の売上成長率と営業利益率の合計を40%以上に保つべきだというもので、成長と収益性のバランスを測る指標として広く活用されています。
本記事では、40%ルールの定義や計算方法、重要性について解説するとともに、日本市場の特徴や成功事例から、SaaS起業家がどのように活用できるかを探ります。最後までお読みいただき、経営戦略に役立てていただければ幸いです。

40%ルールとは

2-1. 40%ルールの定義

「40%ルール」とは、SaaS企業が成長と収益性のバランスを測るために用いられる指標です。このルールでは、売上成長率と営業利益率の合計を40%以上に保つことを目標とします。たとえば、成長率が30%、利益率が10%であれば、40%ルールを達成している状態です。
このルールの特徴は、企業の攻め（成長）と守り（収益性）の両面を一つの数値で捉えられる点にあります。そのため、成長を最優先にするスタートアップから、収益性を重視する成熟企業まで、幅広い段階で活用できるシンプルかつ実践的な基準として評価されています。

2-2. 40%ルールの計算方法

計算は非常にシンプルです。次の式を使うだけで、企業がこのルールを満たしているかを確認できます。

40%ルール = 売上成長率 + 営業利益率

例えば、売上が前年より50%成長し、営業利益率-5%であれば、計算結果は「50% - 5% = 45%」となり、40%ルールをクリアしていることになります。
40%ルールは、その単純さゆえに投資家や経営者から重宝されており、企業評価や経営戦略の指針として幅広く活用されています。

なぜ40%ルールが重要なのか

3-1. 成長と収益性のバランスを測る

SaaSスタートアップは、急成長を目指して多額の資金をマーケティングやプロダクト開発に投資します。しかし、こうした投資は利益率を圧迫するため、事業の持続可能性が懸念されることもあります。40%ルールは、どれだけ成長に資金を投入しつつも収益性を犠牲にしないか、その適切なバランスを測る基準を提供します。

3-2. 財務健全性の指標

このルールをクリアしている企業は、投資家や金融機関から「成長と収益性の両面で安定している」と評価されやすく、資金調達や信用力向上の面で優位に立つことができます。逆に、大幅に下回る場合はキャッシュフローや財務面でのリスクが指摘される可能性があります。

3-3. 投資家からの評価を高める

投資家にとって40%ルールは、企業価値を測る重要な指標の一つです。この数値が高い企業ほど、IPOや資金調達の際により高いバリュエーションを得られる傾向にあります。そのため、企業はこの基準を意識して経営することで、長期的な成長の道を築けます。

3-4. 戦略的な意思決定を支援する

例えば、新しいマーケティング施策やプロダクト改善が、ARRの成長や利益率にどの程度寄与しているのかを測定する際にも40%ルールは有効です。具体的な数値目標があることで、経営陣は戦略の優先順位を明確化しやすくなります。

3-5. 長期的な視点をもたらす

短期的な利益を追求しすぎると、成長のチャンスを逃す可能性があります。40%ルールは、成長と収益性を同時に追求することで、持続可能な事業拡大を促すための基準となります。

日本のSaaS企業と40%ルール

日本でも、40%ルールをクリアしているSaaS企業がいくつか存在します。以下はその代表例です：

• Rakus: 業務支援ソフトを展開。40%ルールスコアが45.5%と高水準を維持しながら、安定成長を実現。
• Plus Alpha Consulting: クラウドERPを提供し、スコアは64.9%。ARR成長と利益率の両面で優れた成果を上げています。

これらの企業はいずれも、成長と収益性を重視しながら、特定の市場ニーズに応えるプロダクト戦略を採用して成功を収めています。
詳しくは、projection-ai:dbでご覧ください。

5. まとめ

SaaS企業において、成長と収益性を両立することは、経営上の大きな課題です。その解決のためのシンプルかつ強力な指標が「40%ルール」です。
本記事では、40%ルールの定義や計算方法から、その重要性、日本市場の特性、さらには具体的な成功事例まで幅広く解説しました。特に日本市場においては、SaaS導入率の低さや保守的な企業文化といった課題がある一方で、DX推進や政府の政策が追い風となり、今後の成長が期待されています。
SaaS起業家の皆さまには、この記事を通じて40%ルールを経営戦略の判断基準の一つとして活用していただきたいと思います。成長率と利益率のバランスを考えた意思決定が、企業価値を向上させるだけでなく、サステナブルなビジネスの実現につながるはずです。次のステージに進むための一歩として、40%ルールを活用してみてはいかがでしょうか？