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ヘルスケア・メディカル領域で勢いを増すバーティカルSaaS

Finance12.21.20216 min read

最新のスマートフォンやウェアラブルデバイスを見渡すと、どれもヘルスケアやメディカルに関わる機能が搭載されている。

Appleのデバイスはもちろんのこと、GoogleはフィットネストラッカーのFitbitを買収し、Deepmind (Alphabet傘下) は創薬支援や病院患者の医療データを基にした病院支援サービスを展開。Amazonは処方箋デリバリーサービスPillPackの買収をした後に「Amazon Pharmacy」を立ち上げ、オンラインで処方薬へのアクセスを可能にした。

また、One Capitalが出資しているOura Ringは睡眠に特化したフィットネスリングとして、アーリーアダプターに利用され始めている。ヘルスケアとメディカル領域におけるデータとコンピューティングの活用は、2020年代のトレンドの1つといえる。

ヘルスケア・メディカル領域のバーティカルSaaS

SaaSビジネスも、ヘルスケア・メディカル領域に特化したバーティカルSaaSとして新たなサービスが登場している。

今回は国内のSaaSビジネスから、1. 医療機関や薬局のオペレーション効率化・高度化支援、2. 企業の従業員の健康管理や健康経営推進支援、3. 人々の医療へのアクセス支援、の3つのカテゴリーで企業をピックアップ。バーティカルSaaSを展開する各社の取組みのイメージを掴むために、各カテゴリーで資金調達をしている企業を簡単に紹介していく。

1. 医療機関や薬局のオペレーション効率化・高度化支援

まずは、医療機関や薬局といった医療従事者が働く環境に向けた、オペレーション効率化やサービス高度化を支援するカテゴリーから紹介する。

CLINICS、Pharms / MEDLEY

医療機関の予約、オンライン診療、電子カルテ、診療報酬明細書をSaaSとして提供することで、医療機関のオペレーション効率改善を支援する、クラウド診療支援システム「CLINICS」。

そして、薬局の受付業務や処方箋のネット受付、オンライン問診、服薬のフォローアップといった、調剤薬局のオペレーション効率改善を支援する、かかりつけ薬局支援システム「Pharms」。

こうした医療プラットフォーム事業を展開しているのが、2019年12月に東証マザーズへ上場したMEDLEYである。

CLINICSでは、医療機関のオペレーション効率改善だけでなく、病院に行くことが難しい人が医師による遠隔診療を受けることも可能。医療プラットフォーム事業を通じて、国内の医療現場が抱える課題解決に取組んでいる。

資金調達状況

調達額 : 累計20.8億円を調達し、マザーズへ上場済み。

ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー / CureApp

アプリによる行動変容支援によって、従来は治療が難しかった疾患にアプローチするDTx(Digital Therapeutics / デジタルセラピューティクス)。

DTxの文脈において、治療用アプリとして国内初の医療機器としての承認を受けたのが、CureAppが展開する「ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー」。

現在は、ニコチン依存症治療の他、「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)治療アプリ」や「高血圧治療アプリ」といったプロダクトを治験中となっており、医師が処方する「治療アプリ」という新たな領域を開拓している。

国内初の薬事承認、保険適用を受けたアプリとして、DTxの社会浸透促進を図るほか、アルコール依存症、がん患者支援等の新領域のパイプライン拡大を目指していく。

資金調達状況

調達額 : 累計20.8億円
直近の調達 : 21億円(第三者割当増資、融資の合計)/ 2021年3月

Musubi / カケハシ

薬局における業務効率化、患者のフォロー、経営分析、AIを活用した需要予測・在庫管理といった機能を提供する、薬局向け業務サービス「Musubi」。全国約6万店の調剤薬局を対象に、薬局業務のDXを推進している。

患者の過去の処方・薬歴といったデータに基づき、一人一人に合わせた指導内容を提示できるようになるとともに、事務作業を簡略化することで、調剤薬局における指導の質の向上と生産性の向上を支援する。

薬剤師と患者とのコミュニケーションを円滑にすることで、病院の近くというロケーションで選ばれる調剤薬局から、患者が薬剤師に悩みを相談できる「かかりつけ薬局」へと体験を変革していくことを目指している。

資金調達状況

調達額 : 累計55億円
直近の調達 : 18億円 / 2020年12月

ユビー AI問診 / Ubie

患者が病院・クリニックで診療を受ける際の問診において、患者ごとに最適な質問をAIが自動生成し、診療の効率化を支援する「ユビー AI問診」。

これまで、患者による問診票の記入が行われていた病院の待合室だけでなく、医療機関を訪れる前に事前のオンライン問診も可能にすることで、患者の待ち時間を大幅に削減し、医療機関のスタッフや医師の工数も削減する。

国内の医療現場における医療従事者の過重労働の問題に対し、問診から業務効率化にアプローチし、医療機関全体のエンパワーメントを推進している。

資金調達状況

調達額 : 累計44.8億円
直近の調達 : 11億円 / 2020年11月~2021年1月

MediOS / Contrea

インフォームド・コンセントにおける、専門的かつ定型の内容が多い医療行為の説明を動画に置換えることで、医師や看護師の工数を削減しながら患者の理解を促進し、患者と医師・看護師の本質的なコミュニケーションの質を向上できる「MediOS」。

円滑なインフォームド・コンセントを支援し、医療従事者の過重労働を改善するとともに、個別性の高い説明に医療従事者が注力できることから、患者と医療従事者の関係構築にも寄与する。

資金調達状況

直近の調達 : 1.4億円 / 2021年11月

2. 企業の従業員の健康管理や健康経営推進支援

続いて、企業における従業員のヘルスケア、及び健康経営推進を支援する、B2B SaaSのプロダクトを見ていく。

ラフールサーベイ / ラフール

従業員のストレスチェックに加え、体のコンディションや組織エンゲージメントを調査する「ラフールサーベイ」。組織や従業員の状態を可視化する一般的なサーベイツールにメンタルヘルスケア・臨床心理の視点を加えることで、従業員の健康管理と組織の健康経営を支援する。

また、医療従事者向けに特化した「ラフールサーベイ for Medical Workers」を展開し、医療従事者のセルフケアや医療機関における職場課題へのアプローチも始めた。

資金調達状況

調達額 : 累計20億円
直近の調達 : 12.3億円 / 2020年12月

BeatFit for Biz / BeatFit

オーディオコンテンツによるエクササイズアプリ「BeatFit」をベースに、従業員の運動習慣を定着させ、企業のメンタルヘルス対策を支援する「BeatFit for Biz」を健康経営ソリューションとして提供。

楽しく運動習慣化ができるオーディオコンテンツ、HR部門が従業員の状況をモニタリングできるダッシュボード、といったサービスを通じて、在宅勤務における従業員の運動不足によるメンタル不調や生活習慣病への対策を支援する。

資金調達状況

調達額 : 累計5億円
直近の調達 : 2億円 / 2021年10月

3. 人々の医療へのアクセス支援

最後に、人々が医療にアクセスしやすくすることで、ヘルスケア・メディカルに関する環境を改善しているカテゴリーを紹介する。

LEBER / リーバー

一般の人々が、自身の症状に適した医療機関や市販薬の紹介について医師に相談することができる、遠隔医療を実現するアプリ「LEBER」をベースに、企業や保育園・高齢者施設の健康管理情報蓄積や医療相談にも対応する「LEBER for Business」、「LEBER for School」を展開。医師による適切なアドバイスを身近にすることで、人々の医療へのアクセスを支援している。

「LEBER」を通じて、健康リテラシーの向上、市販薬を活用したセルフメディケーションの推進を図り、日本の医療費抑制と持続可能なヘルスケアシステムの構築を目指す。

資金調達状況

直近の調達 : 4.3億円 / 2020年2月

まとめ

今回は、国内のバーティカルSaaSのうち、ヘルスケアとメディカル領域でサービスを紹介した。

2024年度に適用となる、勤務医の時間外労働の上限規制を中心とした医師の働き方改革。そして、2019年に交付された改正薬機法による、薬剤師の薬局外での患者フォロー義務化、といった医療従事者の労働問題改善に向けた法・制度整備を受けて、今後ますますヘルスケア・メディカル領域のバーティカルSaaSは、医療機関や薬局のオペレーション効率化を中心にSaaS導入のニーズが高まっていくと考えられる。

この他、国内のバーティカルSaaS全体を見渡せる「バーティカルSaaSカオスマップ 2021」を私たちの母体のVCにて公開しているので、そちらもご参照いただきたい。

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