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これからSaaSを始める起業家が知っておきたい事業計画の作り方

Finance9.17.20212 min read

事業計画と聞くと、少し難しいように聞こえるかもしれない。しかし、成長やそのためのリソースが求められるスタートアップにとっては、事業計画を作ることは避けて通れない道だ。

今回は事業計画の作成にあまり馴染みがない方、特にこれからSaaSビジネスを展開する方向けに、事業計画の作成手順を簡単に解説する。

事業計画を作る前に知っておきたい財務諸表

事業計画を作るにあたっては、まず、財務諸表について理解しておく必要がある。財務諸表は、損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CS)の3種類で構成されている。

損益計算書(PL)

PLとは、一定期間(月間、四半期、年間)において、売上や利益(損失)をはじめとしたビジネスの実績を見るためのものだ。

主な項目としては、売上、売上原価、売上総利益(粗利)、販管費、営業利益などがある。販管費は、海外を意識してS&M(Sales & Marketing)、R&D(Research & Development)、G&A(General & Admin)として開示するSaaS企業も増えてきている。

上場企業であれば、経常利益や純利益まで管理することが当たり前だが、スタートアップにとっては、営業利益までカバーできれば問題ないだろう。

貸借対照表(BS)

BSとは、ある時点(月間、四半期、年間)における資産、負債、純資産をみるためのものだ。

資産における主な項目としては、現金、売掛金、在庫、固定資産などがある。負債には、買掛金、未払金、前受収益(繰延収益)、借入金などが含まれる。純資産には、資本金、資本剰余金、利益剰余金などが含まれる。

資産=負債+純資産となることは覚えておきたい。

キャッシュフロー計算書(CS)

上述したPLは、現金の動きに関わらず、売上や費用が発生した時点で計上するというルールによって作成される。そのため、PLの数字は必ずしも現金の動きと一致するとは限らない。

売上が好調なのに倒産してしまう企業は、キャッシュフローの管理ができていないケースが多い。そのために、CSを作成する必要がある。

主な項目としては、営業キャッシュフロー(営業活動によって生じるキャッシュフロー)、投資キャッシュフロー(固定資産の売買などで生じるキャッシュフロー)、財務キャッシュフロー(株式発行や借入返済などによって生じるキャッシュフロー)の3つがある。

ハードウェアを扱うビジネスの場合、事業が成長すれば売掛金や在庫が積み上がり、より多くのキャッシュが必要となる。しかし、SaaSの場合は年間契約(一括支払い)が一般的なため、前受収益が積み上がるため、キャッシュは潤沢になりやすい。

SaaSの事業計画を作ってみよう

さて、ここからが本題となる。実際にSaaSの事業計画を作成するにあたって抑えておくべきポイントを解説する。

1.PL計画を月次で作成する

事業を立ち上げた当初は、PLとCSの乖離がそこまで大きくなることはないため、まずは1〜2年分のPL計画を月次で作成することをおすすめする。

PL計画を月次で作成することで、毎月の売上とそれを達成するために必要なコストが算出することができる。ここでは、毎月の売上成長率に加えて、毎月必要な費用、つまり、キャッシュに焦点を当てて解説する。

現在保有しているキャッシュでどのくらいの期間持つのか、どのくらいのタイミングで資金調達しなければならないのかを適切に管理することが大切だ。

また、PLでは3つのシナリオ(ベースケース、ベストケース、ワーストケースなど)を作成し、各シナリオにおいて売上や費用がどのように変化するか、シミュレーションしておくことを推奨する。

では、ここからどのようにPLを作成するのか、具体的に解説していく。

PLを作成する場合、まずは売上計画を作成する。売上は、顧客単価と顧客数に分解することができる。そのため、月次顧客単価(ARPA)と顧客数を推定する。

SaaSの場合、解約が発生しない限り顧客が積み上がっていくビジネスモデルとなっているため、以下のように毎月の売上を計算する。

売上(リカーリング)=顧客単価(リーカリング)×(今月の新規顧客数+前月までの累計顧客数ー今月の解約顧客数)
※リカーリングとは継続的に発生するという意味で、サブスクリプションビジネスで重要視される

SaaS企業でも、上述したリカーリング売上以外に、システムの導入支援やコンサルティングなどのスポット売上も発生する。スポット売上は以下にて計算することが可能だ。

売上(スポット)=顧客単価(スポット)×今月の新規顧客数
※上記は1ヶ月だけ発生した場合を想定

これらを足し合わせたものが一般的な売上のことを指す。

売上=リカーリング売上+スポット売上

売上計画が完成したら、その計画に応じて、コスト計画を作成する。

必要なコストを積み上げ式で作成するのも良いが、青天井になってしまうことも考えられる。そのため、売上のXX%までといった逆算型の発想にて作成することを推奨する。そこから、さらに各項目(S&M ,R&D,G&Aなど)において、何にどのくらい使うのか明細を作成する形が健全なコスト計画だろう。

2.キャッシュ計画を作成する

コスト計画ができたら、毎月必要なコスト、すなわち、必要なキャッシュが見えてくるはずだ。

売上から、原価および販管費(S&M,R&D,G&A)を差し引いた営業損益(通常マイナス)を毎月必要なキャッシュと捉える。月初の保有キャッシュからその金額を差し引いた金額を、月末のキャッシュ残高と想定することで、キャッシュ計画を作成することが可能となる。

月末の保有キャッシュ=月初の保有キャッシュ±当月の営業損益

3.予実管理を行い、資金調達のタイミングを見極める

PL計画とキャッシュ計画が完成したら、毎月振り返りを行うことが重要だ。当月の実績値と比較することで予実管理を行い、現在の保有キャッシュでどのくらい持つのか、資金調達のタイミングはいつ頃が良いのかを見極めよう。

また、このように予実管理をしていく中で、実績が計画から大きく乖離してしまった場合は、それ以降の蓋然性を高めるために計画の作成方法を少しずつ修正することが肝要だ。

ある程度、ビジネスが軌道に乗り、資産や負債などの項目がきくなってきたら、BS計画を作成しよう。資産、負債、純資産をより効率的に活用した経営ができるような体制に整えることが求められる。

最後に、CSはPLとBSから作成することが可能なため、BS計画の作成時に取り掛かると良いだろう(BS・CS計画が必要なフェーズになれば、ファイナンスに精通している担当者や会計委託先がいると思われるため、今回は割愛する)。

おまけ:デュポン公式ってなんだ!?

資産、負債、純資産を効率的に活用できているかどうかを測る指標として、デュポン公式がある。この公式は事業が生み出すROE(Return on Equity)を細分化することで、何がそのビジネスのROEを高めているのか、どこに改善の余地があるのかを明らかにすることができる。

デュポン公式で出てきた数値は、自社の数値だけを確認してもそれが適正水準であるかどうか判断できないため、同業界・業種の企業と比較することで、数値の妥当性を明らかにすることができる。

Written by kakeru miyoshi(@saas_penguin)& masato morishima(@MasatoMorishima

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projection-aiは、SaaS スタートアップのための事業計画作成ツールです。上記のような作成フローを参考に、「素早く簡単に」SaaS の事業計画を作成することができます。7日間のフリートライアルを希望される方は、こちらよりオンラインデモの申込をしていただけますと幸いです。


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