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なぜ事業計画は「トップダウン(逆算)」で作るべきなのか

Finance12.8.20212 min read

SaaSビジネスのスタートアップにおいて、自社の成長戦略を描くために事業計画は不可欠

SaaSビジネスのスタートアップにとって、自社の成長戦略を描くために、事業計画の策定は不可欠といえる。

ARRが肝となるSaaSビジネスでは、一般的な事業計画とは異なる、SaaS固有のメトリクスを組み入れた事業計画が必要となるが、その知見はまだ浸透しきっていない。

今回は、SaaSに特化したVCが母体である私たちの知見をベースに、事業計画の策定手法について俯瞰的に解説していく。

事業計画策定のアプローチは、2つに分かれる

SaaSビジネスの事業計画の策定は、2つのアプローチに分類できる。一つひとつのメトリクスを積み上げて構成する「ボトムアップ(積上型)」と、ゴールからメトリクスを逆算して考えるする「トップダウン(逆算型)」である。

これら2種類の事業計画策定方法の違いを、以下にて説明していく。

事業計画策定アプローチ ① ボトムアップ (積上型)

ボトムアップで作る事業計画は、自社のビジネス・プロダクトに関わる様々なメトリクスのロジックを明らかにしながら、一つひとつのメトリクスを積み上げていくアプローチとなる。

例えば、チャーンレート(解約率)とARPU(Average Revenue Per User)、粗利率からLTV(Lifetime Value)を算出し、新規顧客数とセールス&マーケティングのコストからCAC(Customer Acquisition Cost)を算出。

「ユニットエコノミクス(LTV / CAC) = 3x以上」となるロジックを設計しつつ、目標ARRを導き出す、といったアプローチとなる。その際、それぞれのメトリクスも前提となる数多くのパラメーターを整理しながら、積み上げて試算していくこととなる。

事業計画策定アプローチ ② トップダウン (逆算型)

トップダウンで作る事業計画は、まず目標とするARRを設定し、達成するために必要なメトリクスを導き出すアプローチとなる。

例えば、ARR1,200万円が目標でARPUが月額10万円の場合、必要な顧客数は120社となる。120社を新規獲得する場合、受注率を50%とすると、240件の商談が必要となる。このように目標から逆算して現実的な数値になるようにチューニングしていくアプローチとなる。

事業計画におけるゴール(ARR)から逆算していくことになるため、KPIや各種メトリクスは、必然的に計画達成に必要なアクションを表した内容となる。

それぞれのアプローチの特長

次に、ボトムアップとトップダウン、それぞれの特長を見ていく。

ボトムアップ型

ボトムアップのアプローチは、数多くのメトリクスを整理して積み上げていくことから、一つひとつのメトリクスとその変化(成長に向けた変化)の蓋然性が高いことが求められる。従って、予測を立てやすい短期の事業計画の策定に向いている。

また、把握すべきメトリクスが多岐に渡ることから、自社のビジネスロジックとメトリクスのあり方を精緻に捉えられるようになる。

一方、こうしたボトムアップの特長は、無数のメトリクスを追いかけることが目的化してしまうこともしばしばある。

整理しているメトリクスは十分に事業の姿を網羅できているか、個々のメトリクスと変化を算出するロジックの妥当性は高いか、といった計画の確からしさに対する不安が生じやすい点が、無数のメトリクスを追いかけたくなってしまう要因の1つであると推察する。

また、新規性の高いサービス・プロダクトの場合、過去の実績値や類推できるサンプルが少ないため、個々のメトリクスについて納得感のある説明をすることが難しくなりやすく、事業計画全体についても同様に納得を得にくいものとなってしまう懸念もある。

加えて、膨大なメトリクスを積み上げて事業計画を策定しようとするボトムアップ型のアプローチは、多忙な起業家にとって、業務に支障をきたす原因となり得る。

創業初期は、プロダクト案を練るだけでなく、セールス・マーケティング活動、採用や広報、バックオフィス業務など、事業を推進するさまざまなアクションを1人、あるいは少人数で実施することがほとんどだろう。

その中で、大量のメトリクスが並ぶスプレッドシートから事業計画を策定するリソースの捻出は困難になりがちだ。

さらに、事業が進むにつれて、メトリクスやロジックが計画から実績に置き換えられていくと、スプレッドシートの行・列が増えていき、数値の確認作業や管理も煩雑になっていく。数値を調整するたびに、ロジックに無理がないか、計算・関数のミスがないかをチェックするリソースも必要となる。

こうしたボトムアップのアプローチで事業計画を策定する場合、策定に割けるリソースが十分になければ、計画の確からしさが揺らいでしまう。起業家自らが納得できる事業計画がなければ、事業をどのように推進していくかを見通せなくなってしまうため、事業推進そのものと同様に多大なリソースの確保が必要となる。

もし、ボトムアップの事業計画策定を十分に実施しきれなかった場合、出来上がった計画の蓋然性が不十分なものとなり、多くの場合、計画未達という結果をまねいてしまう。

事業計画の未達は、事業の成長を鈍化させることに直結する。また、既存投資家との関係性が悪化したり、次回ラウンドの難易度が上がる、といった影響も受けるだろう。

短期の計画策定に向いているボトムアップ型のアプローチは、計画策定の工数が大きくなりやすく、十分なシミュレーションを実施しきれなかった場合、計画未達に転じやすいことについて留意すべきである。

トップダウン型

一方、トップダウンのアプローチは、最初に目標を設定し、目標達成に必要なメトリクスを逆算して求めていくことから、目標達成のための中長期の事業計画策定に向いている。

事業計画の全体像から、事業推進の具体的な施策に落とし込んでいくために必要なメトリクスを抽出していけば良いため、事業戦略やロジック、そして事業推進にフォーカスしやすい構造となっている。

また、ボトムアップのアプローチと異なる点としては、目標達成に必要なメトリクスがクリアなため、計画の未達を回避しやすいという点がトップダウンのの特徴となる。

トップダウンで確からしい事業計画を策定するためには、逆算の根拠となる、蓋然性の高い成長モデルが必要となる。

そのため、T2D3のような理想的なパターンや他社実績を分析することで、既にある成長モデルの中から、自社にフィットするものを見つけ出すことが求められる。

ボトムアップのアプローチでは、メトリクスの妥当性と網羅性が事業計画の精度を左右することになるが、トップダウンにおいては、参照するモデルの再現性が計画達成の鍵となる。

いくら成長率が高いモデルであっても、プロダクトの完成度や組織の成熟度と乖離していては、納得できる事業計画を策定できないため、どのような成長パターンが自社にとって相応しいか十分に見極める必要がある。

トップダウンのアプローチは、目標設定と成長モデルを用いた逆算、というシンプルな構造で計画の未達を回避するものといえる。その過程で、自社にとって再現性のある成長モデルの研究がアプローチの要となる。

この点について、起業家がスムーズに事業計画の策定ができるよう、弊社が研究した複数の成長モデル・テンプレートを事業計画SaaS「projection-ai」へ実装している。

また、目標設定からKPI・各種メトリクスへの展開も自動計算できるため、最短・最小限の工数でハイクオリティな事業計画を策定することができる。

まとめ : 事業計画の未達を回避するためには、トップダウンで作成することがポイント

以上、ボトムアップとトップダウン、それぞれの事業計画策定アプローチの違いを解説した。

精緻で短期の計画策定に向いているボトムアップ、中長期の計画策定に向いているトップダウン、それぞれの特長と留意すべき点を踏まえた上で、計画未達を避けなければならないスタートアップにとって、トップダウン型のアプローチが相応しいと考えている。

計画の未達を回避することで、スムーズな資金調達が可能となるため、トップダウンで事業計画を策定し、自分たちが成すべきことをクリアにした上で事業を推進していくことを推奨する。

トップダウンの事業計画策定支援ツール projection-ai

projection-aiはSaaSスタートアップのための事業計画作成ツールです。目標ARRから必要なKPIを自動算出することができるため、蓋然性の高いトップダウン型の事業計画を素早く簡単に作成することができます。

また、国内外のSaaS企業におけるコスト構造や人員目安などをまとめた「ナレッジページ」も用意。実績がないスタートアップでも、業界水準を参考にしながら、事業計画を作成することができます。
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