「従業員数一人あたりARR(ARR per Employee, 以下APE)」という指標は、SaaS企業が収益性と成長効率を評価する上で役に立つ指標の一つです。今回は、この指標の定義や計算方法、上場企業の事例をご紹介、ご説明します。
ARRを従業員数で割ることで計算されます。従業員1人あたりが企業にどれだけの収益をもたらしているかが明確になります。
計算式:
従業員数一人あたりARR = ARR ÷ 従業員数
この指標の重要性は、特に急成長を目指すスタートアップにおいて顕著です。たとえば、ARRが急成長している一方で、従業員数が増えすぎると効率性が低下し、収益性の維持が困難になる場合があります。一人当たりARRは、そうした組織規模と収益性のバランスを可視化するツールとして役立ちます。
注意すべき点
ただし、あくまで単一の指標であり、他の重要な指標(例えば、CACやLTV)と併せて分析することが大事です。APEが高いからといって、必ずしも企業全体が健康的な状態であるとは限りません。例えば、従業員数を極端に抑えて高収益を出している場合、長期的にはスケーラビリティの課題が生じることもあります。つまり疲弊した社員の退職により、顧客チャーンが増加してしまうこともあります。
2024年末時点で、リカーリング比率が70%以上かつARRを公開している企業の従業員一人あたりのARRを大きい順に並べました。中央値は1,900万円で、Appierが最も大きく4,600万円でした。
ただし、スタートアップがこの指標をそのまま追うことは現実的ではなく、かえって非効率的な運営を招く可能性もあります。
特にスタートアップの段階では、PMFが完了していること、そしてARRが安定して成長していることが重要なポイントとなります。ARRが10億円未満のスタートアップであれば、APEは500万円から1,000万円の間に収まっていれば、十分健全な状態で、1,000万円から1,500万円の間であれば、かなり健全な状態といえます。企業の成長ステージやARR規模に応じた目標設定を行い、一人当たりARRの数値を現実的な指標として活用することが大切です。
APEを計算した結果、目標や業界平均と比較して改善が必要だと感じた場合、どのような施策を取れば良いのでしょうか?具体的な改善方法を3つの観点から解説します。
自社のARRを増やすことで、一人当たりARRを向上させることができます。
従業員数の増減や業務プロセスの効率化も、一人当たりARRの改善に大きな影響を与えます。
一人当たりARRの改善は短期的な施策だけでなく、長期的な戦略も重要です。
APEは、SaaS企業の収益性や効率性をシンプルかつ直感的に測ることができる重要な指標です。特にスタートアップにとっては、自社の成長ステージやARR規模に応じた現実的な目標を設定しながら、この指標を活用することが成功への第一歩となります。
この指標の良い点は、計算が非常に簡単であることです。必要なのは、ARRと従業員数という2つのデータだけ。それさえあれば、すぐに計算でき、現在の収益効率や課題を明確にするための貴重な情報が得られます。
ただし、PMFの達成度とARR規模を鑑みて評価することが重要です。これにより、企業全体の健康状態をより正確に把握し、適切な改善アクションを取ることができます。
まずは自社のAPEを計算し、現状を分析してみましょう。そして、この記事で紹介した事例や改善方法を参考にしながら、収益効率の向上と持続的な成長を目指してください。
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