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ARR100億円を達成するために必要なのは「組織づくり」- VCが事業計画をみるポイント -

Handbook10.25.20211 min read

SmartHR、アンドパッド、HRBrain・・・。

これら急成長中のスタートアップを支援しているのが「ALL STAR SAAS FUND」です。その名の通り、SaaS企業に特化したVCファンドを運用しています。

今回は、同ファンドでマネージングパートナーを務める前田ヒロさんに、投資判断基準や事業計画において確認するポイントを伺いました。

<前田ヒロ 氏 プロフィール>
ALL STAR SAAS FUND マネージングパートナー
2010年、世界進出を目的としたスタートアップの育成プログラム「Open Network Lab」をデジタルガレージ、カカクコムと共同設立。その後、BEENOSのインキュベーション本部長として、国内外のスタートアップ支援・投資事業を統括。2015年には日本をはじめ、アメリカやインド、東南アジアを拠点とするスタートアップへの投資活動を行うグローバルファンド「BEENEXT」を設立。2016年には『Forbes Asia』が選ぶ「30 Under 30」のベンチャーキャピタル部門に選出される。


三好:前田さん、本日はよろしくお願いします!早速ですが、新規投資を検討する際の投資判断基準を教えてください。

前田氏:はい。主に3つのポイントがあるのですが、最も重視しているのは「組織」です。ARR100億円規模になると300人程のメンバーが必要になってくるので、経営者が組織作りにしっかり取り組めるかどうかを見ています。

また、それに関連しますが、採用した人が活躍できる場をきちんと提供できるかどうかも重要ですね。

2点目は、マーケットとポジショニング。具体的には「ARR100億円を達成できるプロダクトかどうか」です。

特にポジショニングは、PMFしたはいいものの、競争が激しすぎて、スケールしないというリスクもあるので、大切なポイントです。

最後は、経営者自身が長期間コミットできるかどうか。今は急成長しているSaaS企業が多いですが、BlacklineやQualtricsのように、トラクションが積み上がるまで長期間かかるケースもあります。

そのため、経営者が長いスパンで経営できるかどうか、やり切れるかどうかの見極めは重要です。


三好:なるほど。シード投資の場合、組織のスケーラビリティはどのように見極めているのでしょうか。

前田氏:経営者がどのくらい組織作りに関心を持っているかどうかですね。組織を拡大させることにこだわりを持てているか、それを意識した取り組みができているかを確認していますね。

また、現在巻き込んでいる人がどのような人なのかも見ています。どのような価値観を持っているのか、どのような強みを持っているのかをヒアリングしていますね。


三好:ありがとうございます。事業計画において重視しているメトリクスはありますか。

前田氏:Gross Churn Rateですね。これはNRRにも言えるのですが、Net Churnだと色々と隠せてしまうんです。例えば、アップセルが好調だと、自ずとNet Churn Rateは低下しますよね。

なので、顧客満足度を測る上では、Gross Churnを重視して見ています。


三好:Churn RateはCustomer Churnですか?

前田氏:どちらも重要ですね。プライシングにもよりますが、基本的にはCusotmer ChurnとRevenue Churnは相関関係にあるかと思います。

具体的な数値を挙げると、エンタープライズだと0.67%、SMBだと1.5%くらいが理想的です。かなりハードルは高いと思いますが・・・。


三好:その基準をクリアしているのスタートアップはやはり少ないでしょうか。

前田氏:ごく僅かですね。でも、常にこの高い基準は追求していきたいと考えています。

(インタビューに答える前田氏)

三好:既存投資先の事業計画や進捗は、どのくらいのペースで確認していますか。

前田氏:企業のフェーズやニーズによって異なります。タッチポイントが多い企業については、週に2回、1on1を実施しています。組織やプロダクトに関するディスカッションをすることが多いですね。

ほとんどの会社は月に1回、少ない企業だと、3ヶ月に1回くらいのペースでコミュニケーションを取っています。


三好:投資先に対して、最も注力して支援していることは何でしょうか。

前田氏:やはり、「組織作り」に関する支援に最も力を入れています。採用もそうですが、新しく入ったメンバーがしっかりとオンボーディングされているかどうか。社内で適切なコミュニケーションが取られていて、人事評価制度が明確になっているかを確認したりしていますね。


三好:なるほど。目標未達のスタートアップにみられる傾向などはありますか。

前田氏:Churnが高いことですかね。ファネル分析をしていますが、Churnが高い理由は、オンボーディングが弱いか、そもそもPMFしていない可能性があります。

Churnになるプロダクトは、顧客がきちんと使いこなせていないケースが7割くらいなので、オンボーディングを強化することが重要ですね。


三好:そのような場合、どのような形で支援されているのですか。

前田氏:CSのオペレーションをヒアリングして、理想的なオンボーディングプロセスと照らし合わせながら、どのような点が不足しているのか確認します。

そもそもPMFしていないのであれば、経営者とコミュニケーションを取ってプロダクトの方向性を見直すこともあります。


三好:逆に、目標達成しているスタートアップのパターンがあれば、教えてください。

前田氏:プロダクトの初期段階で、顧客の解像度が高いかどうかだと思います。初期段階でそこがクリアになっていないと、最適なワークフロー、細かいUIUX、最適なオンボーディングを提供することはなかなか難しいかと思います。


三好:ありがとうございます。では最後に、日本のSaaS起業家に対して、メッセージをお願いします!

前田氏:日本のSaaS市場は今、いくつもの状況が重なるという奇跡が起きていると感じています。

まずは、クラウドやスマートフォン・PCの普及。インターネットがあれば、いつでもどこでも仕事ができるようになりました。

次に、サブスクリプションという概念の普及。世界初のサブスクは1700年代のドイツの出版社と言われていますが、今やサブスクは当たり前になりつつあります。

そして最後が、労働人口の減少という社会的要因。一人当たりの生産性を高めていかないといけない状況の中、SaaSというソリューションが急速に普及しています。

このように、テクノロジー、ファイナンシャル、ソサエティ、3つの要因が重なり、マーケットが急速に伸びています。これは、百年に一度くらいの奇跡だと思っているので、この市場で戦っている起業家、そして、私たちのような投資家はすごく幸運だと思います。

もちろん、起業家にとって、ハードシングクスはたくさんあるかもしれませんが、踏ん張っていただきたいですし、私たちも最大限の支援をさせていただきたいです。


三好:SaaSは奇跡。素敵なメッセージですね。本日はありがとうございました!

前田氏:こちらこそありがとうございました。


Interview & Text by kakeru miyoshi(@saas_penguin
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